多様な当事者を対象に、政策の枠を超えた農福連携が広がり始めています。
政策の定義からはみ出したとしても、農業の多面的な活用により、当事者の幸福に寄与するのであれば、それは農福連携の取り組みです。
農業と福祉の融合に定形は無く、それぞれの課題解決のために、それぞれの農福連携がある。
農の新たな活用が普及し、ひとりでも多くの当事者とその家族の福祉課題を解決するために、運営してゆきます。
- 運用者のプロフィール
- 農の医療的・福祉的活用モデルの始まりについて
- 地域初の農福連携事業体の設立
- 政策への反映、都市連携、農福[ 越境 ]連携など、新たな取り組みを創造
運用者紹介
- 岡元一徳 Kazunori Okamoto
都城三股農福連携協議会 代表理事 - 映画・CM等の映像コンテンツの企画・制作、著作権管理、キャスティングなどの業務に15年程携わる。
専業農家だった父親が心臓疾患で急逝。母親のアルツハイマー型認知症発症が急速に進行したため、介護離職して郷里へ23年振りにUターン移住し、介護をきっかけに農福連携の取り組みを開始する。
独自の地域課題解決のため、発起人となり認知症疾患医療センター、介護事業所と共に、都城三股農福連携協議会を設立、代表理事に就任。
「軽度の農作業による認知機能改善プログラム」を考案し、農作業による認知機能改善のエビデンスを採取、学会での発表や政策への反映などの成果を得る。
コンテンツプロデュースの経験を活かし、新たな農福連携事業の構築を推進中。
各種プログラムの全国普及のため、一般社団法人リベラルハーツを設立、代表理事に就任。
活動の背景と成果、これからの活動について
認知症高齢者対象の農福連携を目指す
専業農家だった父親が心臓の病で他界、そして母親がアルツハイマー型認知症を発症。
母親の認知症が急速に進行し、弟のチカラだけでは農業経営が困難になったため、介護離職し東京から、郷里の宮崎に24年ぶりにUターン移住しました。
「畑に出て、農作業がしたい。」
という、認知症の母親の願いを叶えるため、入居する介護施設に、小さな菜園を作ったのが、活動の始まりです。
母親の介護を通じて、高齢農業者の認知症から連鎖する地域の福祉課題を知ることとなります。
介護の傍ら、母親の入居する介護事業所でオレンジカフェを主催し、地域高齢者の実情やニーズを約2年間かけて、収集・解析しました。
医農福のコンソーシアム、地域初の農福連携協議会設立
超高齢社会の到来により、農業振興地域における独自の福祉課題が顕在化することを予測し、組織的な対応が必要と考え、協議会の設立に動き出しました。
認知症疾患医療センター長である認知症専門の精神科医の賛同を得て、地域発の農福連携事業体を設立することに至りました。
このようにして設立された都城三股農福連携協議会は、認知症専門の医療機関が参画する全国でも希有な農福連携事業体です。
農作業を活用した認知機能改善プログラム
その後、認知症疾患医療センター内に、認知症高齢者を対象としたリハビリ用の農園を開設。
そして、軽度の農作業による認知機能改善プログラムを考案しました。
認知症専門の精神科医監修の下、臨床で3年間の試験運用を実施、国内でも、はじめて農作業による認知機能低下抑制のエビデンス採取にも成功しました。
オランダの取り組みから着想を得た、日本版ケア・ファームの設計とともに、農福連携で生産される野菜や穀物を活用した農福連携商品の開発、認知機能改善プログラムの普及活動も積極的に行っています。
ユニバーサル農園という福祉のための農園づくり
コロナ禍により、基礎疾患のある認知症高齢者への接触が制限される状況下、所管する農林水産省 農福連携推進室への提言を行い、現行の政策に反映されました。
また、大学や専門機関などとの情報共有を行い、「農の医療的・福祉的活用」という、新たな農福連携の事業モデルの提案を行っています。
2022年より、東京都において、地域を越境した新たな農福連携の事業モデル形成に向け、社会福祉協議会や研究機関と共に、都市部の福祉課題解決のため、農福連携による都市農園の新たな機能づくりにも積極的に着手しています。